ヨドコウ迎賓館(その1)~フランク・ロイド・ライト

兵庫県芦屋市、阪急電車の芦屋川駅を出て、北を見ると、丘の先端、森に囲まれた地にベージュの建物が見えます。ここは旧山邑邸、現在は物置で有名な「淀川製鋼所の迎賓館」として、ヨドコウ迎賓館です。2016年の11月より大規模な改修を受け、この2月よりいよいよ一般公開が再開されました。この建物の設計は1918年、そして竣工は1924年2月。実に95年前の建物で、今まで大事に守られてきました。

 

設計はアメリカの有名な建築家。フランク・ロイド・ライトです。日本で現存しているのは、部分的なものを含めて僅か4つ。その内ほぼ完全なものとしては、東京の自由学園明日館と、ここヨドコウ迎賓館です。

 

彼は多くの作品を生み出すにあたり、それを実現する多くの弟子を育てましたが、この建物も、実は2人の日本人【遠藤 新(えんどうあらた)& 南 信(みなみまこと)】により実施設計が行われました。当人は基本設計を行い、この建物を造っていた時は、既にアメリカに帰国していました。

 

しかし、この建物を見ても、かつて本で見たライトのエッセンスは十分に感じられ、ライトのカリスマ性が凄かったのか、優秀な弟子が凄かったのか、はかり知れませんが、とても興味深く見ることができます。

 

 

さて、芦屋川を渡り、急な坂道を登っていくと、まもなく入口が見えてきます。オリジナルではこの付近に門があったようですが、道路拡幅の際、解体されてしまいました。

 

 

門を入り、エントランスに向かって行くと、ライトが日本の建物でよく使った大谷石の表情が見えてきます。ここまで来ても入口が見えません。

 

 

少々天井の低い車寄せの正面に、小さな水場があります。その左手がメインの入り口です。本当にここが入口なのか、と不安になるような大きさのドアです。

 

 

車寄せから南側には開口部があり、芦屋の街が見下ろせます。まるでピクチャーフレームに囲われたような空間です。

 

 

敷地は少しずつ北に向かって上がっていきます。それに逆らうことなく、スキップフロアでつながっていきます。ここは車寄せの上にある応接室、2階ですが、奥に行くとこのフロアは1階となり、階段でさらに2階に上がる、という具合です。

 

 

この応接室の高さは目視で3.5m程、上の部分には、リズミカルに並んだ小窓があります。

 

 

階段は広くも高くもないサイズ。今男性がくぐったあたりは、大きな人でしたら頭がぶつかりそうな高さです。しかし無駄ができないように、きちっと階段上が活用されていました。

 

 

ここは最上階にある食堂(来客用)です。とても手の込んだ装飾にあふれている空間です。屋根にある三角形のものの奥には小さな窓があり、壁を伝って光が差し込むつくりになっています。

 

 

屋上から街を見下ろす。芦屋や大阪湾が見えます。設計を行った100年前には、いったい何が見えたのでしょう。

 

2019年3月1日

MENU