まだ桜がつぼみだった2019年4月上旬(平成最後の月)、岩手県の一関市にて、ちょっと不思議な空間づくりが始まりました。2018年秋、お住まいのオーナーであるHさんから「敷地の中に、土に囲まれた貯蔵庫をつくりたい」という依頼を受けました。blogのタイトルにもなったカーヴ(cave)とは洞窟のことです。参考として見せて頂いた写真は、石の階段により下がっていく姿。そう、まさに洞窟に入っていくようなエントランスの写真でした。貯蔵庫としての役目、それに加え、少し狭い空間に入っていく面白さ、そのあたりをHさんと簡単な絵で共有し、具現化してきました。2019年8月に完成しました。
当社では施工ごとに、オーナーさまの声と、施工紹介、および完成までの過程の3つの情報を整理しております。
ぜひゆっくりと完成までの経緯をご覧ください。
入り口となる造作ドアの様子。少し小さめで頭を下げる高さになっています。ハンドルや吊丁番は木製の玄関ドアで使用しているものを、業者さんより部材出しして頂きました。このような雰囲気にあう金物は、なかなか見つけにくいのが現状ですが、今回はバッチリ合いました。木製の玄関ドアは既に金物が変わっており、このハンドルも仙台営業所において、不具合が起きた時用に交換部材として在庫されていたもの。その意味でもラッキーなタイミングでした。
この扉はnokkaの工藤さんにオーダーで製作して頂いたもの。裏のそり止め材には刻印もされており、マークが消えぬよう、オスモカラーのチーク色を塗った後、ふき取り仕上げました。
扉を開け、13段階段を下がります。壁には外部とは色が違うレンガを張っています。階段の踏み面には石を張り、少しラフな印象に。洞窟を掘ったようなイメージを加えました。階段や収納室の照明は「明るすぎず、暗すぎず」灯具は見えにくい位置に配置しています。
カーヴの内部の様子。階段から続くように床に石を敷いています。この部屋には棚の背面3カ所にある間接照明からの明かりで照らすようにしています。コンクリートの無機質な構造体に、天然石や木の棚、暖色の明かりにより有機質を加えています。
外部の様子。左側の盛土のように見える部分が収納室です。この下に広がる世界は建屋からは想像しにくいですが、土が見えている部分にもやがて草や植栽で覆われ、建屋と階段だけが目に留まる景色になった姿が本当の完成形です。周辺には落葉樹で囲まれていますので、雨どいには落ち葉除けネットがついていますが、屋根には落ち葉で覆われた姿も、このカーヴにはお似合いの姿の一つです。時間の経過とともに、もっと目立たなくなって貰いたいと思える、ちょっと不思議な建物です。
2019年9月16日
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