設計から工事にわたり、長きにかけて住まいをつくっていると、完成前の瞬間というのは、感慨にふける、という時間ではなく、「なるべく良い状態でお渡ししたい」という気持ち一色で、掃除やリペアをする時間です。
住文舎の家づくりは、基本的にはこの先もオーナーさんご自身でも直せるものを、という考え方から、無垢の木の床や、補修しやすい素材の塗り壁を多用しています。そのため、引き渡し前のリペアも、簡単な補修やタッチアップが中心になりますが、硬いものの角など、どうしても手に負えない部分に関しては、無理せずに専門のリペアの方にサポートしてもらいます。
先日もあるケースでお世話になりましたが、現地でリペアする場所の確認をしたついでに、リペアの業界についてお伺いしました。
家づくりについていえば、もともとはリペアは工務店、大工さん、塗装業者さんと、それぞれの分野の範囲で行っていましたが、最近の建材(床や扉など)は表面が精密にできたシートが主流のため、逆にちょっとしたキズが目立つようになりました。
またネットの普及により、お客様としても「キズをチェックする目」が備わったことにより、見方がより厳しくなりました。
「ハウスメーカーや建売の現場は、本当に補修ヶ所が多く、玄関入った瞬間に、たくさんの付箋を目にします。」とのこと。
「一方で工務店からの依頼は、ここを直して、というポイントで依頼されるので、ある意味直し甲斐があります。」とも。
いったいその差はなんなのか。住まい手(買い手)と造り手とのお付き合いの(時間の)長さ、だと思いますよ、とリペア職人さんは言っていました。
前者は、お引き渡しの瞬間に指摘しないと、生活してからのキズとして、リペアしてくれないのではないか、と思われているのかもしれません。ましてや建売となると、造っている担当者や職人さんの顔も知らず、家というモノを高い金額で買うわけですから、お客様もチェックに必死です。
一方後者は、キズのチェックもさることながら、このあたりのタイミングは、待ちに待った完成の時、ここから始まる生活にワクワクしている時間です。
造るにあたって生じたキズに甘んじてはいけませんが、オーナーさんからは「住んでしまったらキズが付くものですしね。」と言われたりします。
リペアというのは、実は造り手側の「あっ、やってしまった!」という焦りをリペアしているのではないかと感じています。「巧みな技術をもとに、お悩み解決のプロ」 なかなか素晴らしい仕事の一つです。
20211104 仙台発イチゴイチエのいえづくり