ナナタスイチカフェが出来るまで(七北田公園仮設店舗・建設記)

令和5年、仙台市北部、泉区の七北田公園内に、仮設のカフェをつくろう、というプロジェクトについて、主催となる「七北田公園活性化協議会(通称:7DAYS,Peace)」の皆さんからお話を頂き、今回ようやく実現しました。

 

公園内に仮設とはいえ、カフェという小さくとも商業施設をつくるにあたり、協議会の皆さんも、数年にわたり準備をされてきましたが、少しずつ進みながら、手探りをしながら、オープンとなりました。

 

住文舎は仮設店舗のディスプレイやウッドデッキなどの製作を手がけました。仮設店舗は期間限定ということもあり、撤去のことを考え、既製品としてのスーパーハウスを設置しました。

 

実際に製作する工期は4月後半の約2週間、天気にも恵まれ、多くのサポートを頂きながら完成しました。

 

こちらはミーティングをしながら描いた最初の絵、スーパーハウスの外壁を飾り、テイクアウトのスタンドのイメージです。開店しているかどうかがわかるように、オーニング(庇)が必須アイテムと考えました。

 

 

まだ場所が決まっていないときに描いたスケッチ。このようなロケーションにカフェがあると理想であると考えました。この時考えていたのが、前の道路(通路)からは、正面からは入れないようにすること。まだデッキの大きさは決まっていませんでしたが、背景の木に囲まれたような雰囲気が大事だと思いました。

 

 

具体的な場所が決まり、スーパーハウスのレンタルも固まり、さてどのようなデッキにするかと考え、まとめたプラン。

ウッドデッキの木材と、けやきのカウンターは寺島木材さんから納品されます。大きな加工機械のおかげで、6mまでの長い材料が使えるとのこと。そこで、5.4m角の大きなデッキをつくることになりました。

 

 

 

[なぜデッキを45°曲げたのか]

テーブルがあり飲食ができるデッキの配置は、カフェスタンドからは45°曲げています。この理由は、けやきカウンターが2枚納品される予定だったことや、大きな芝生広場側のある景色が見える席を、より多くつくりたい、と考えてのことですが、実は、一つの仮説を試してみたかったことが基本にあります。

 

お客様の来る前の通りは、カフェスタンドを中心に考えると、湾曲した形状になっています。もしデッキをカフェスタンドと並行につくると、前を通る公園利用者を、カウンターに座る方が、真横から見ることになります。

 

そのことが、妙な気まずさを感じられるのではないか、と思い、もっと自然に、真横から見えない向きにしたらどう感じるだろうか、 それが45°曲げた一番の理由です。人と人とが自然の距離感を感じられるためにも、直角の関係を避けたいと考えました。

 

 

活性化協議会のメンバーが中心になり、労力のかかる塗装を中心にサポートしてくれました。

 

図面は、必要な木材の数量を数えるために描きましたので、その段階では詳細は決まっていません。実際に手を動かす段階で、細かい寸法を決めていきました。

 

 

カフェスタンドの前と、飲食をするデッキとは、1段段差を設けています。これは、カフェスタンドで購入する際に2段上がり、「買う」という行動、さらに1段上がって「くつろぐ」という行動を、無意識に感じてもらえればと考えました。

 

 

カフェスタンドは「NANA+Ichiカフェ」という名がつけられました。スーパーハウスをディスプレイするにあたり、この場所にふさわしい雰囲気を、として考えたのが、表面に木の板を貼ること。それもフィンランドなどでよく使われている工法で仕上げました。(ボード&バテンと言います、詳細は後述)

 

 

最後の仕上げとして、オーニングを取り付け。遠くからでも目立つようにと赤色のオーニングになりました。

 

 

5月のオープンから、本当に多くの方にご利用いただいてます。七北田公園も30年を超え、木々も大きくなりました。都市公園ならではの魅力を感じられる場所になれば、うれしい限りです。

 

 

公園内にも多くのケヤキの木があり、そしてここでは、人の手が加わった、けやきカウンターを触れることができます。木は加工されても生き続けます。本物からしか伝わらないものが必ずあります。

 

 

最後に、

[ボード&バテンについて]

ボード&バテンとは北欧などで多く見られる、外壁の貼り方です。ボードとは板材のこと、バテンとは板どうしの隙間を押さえる押縁(おしぶち)のことです。

この方法では、仮に一部の外壁板が傷んでも、押縁を取ることで容易に一枚毎メンテナンスができます。

ただし、板のそりや欠けなどで、押縁の隙間から雨水が入る恐れがあるため、防水下地が重要です。台風などの横雨が少ない、北欧らしいデザインです。

 

ところで、このバテン(押縁)にも形状があり、フィンランドは角材が多くみられます。機能美の考え方が根底にある国らしい一面が、こんな部分にも感じられます。

 

上の写真は、フィンランド・ヘルシンキ市内にある、古い住宅街の様子です。

 

 

ボード&バテンの外壁も、お隣スウェーデンに行くと、少し様子が変わります。こちらはスウェーデン・ストックホルムの古い住宅。押縁(バテン)の角が丸くなり、柔らかな表情になります。屋根周りのデコレーションも多くなり、豪華できらびやかな雰囲気を感じます。スウェーデンは国王がおられ、宮殿もあることから、外壁でさえも、それらの影響を受けたのかもしれません。

 

一方でフィンランドはスウェーデン領やロシア領だった時代が長く、独立して100年余りの歴史の国です。シンプル&モダンのデザインの宝庫、機能美を追求する点は、そのような歴史も影響しているのでしょうか。

 

 

余談ですが、大西洋に面するノルウェーに行くと、木造の外壁は、ボード&バテンはあまり見られなくなり、変わって板を横に貼り重ねた、下見張り、という方法が多くみられます。ノルウェー第二の街、ベルゲンの風景

 

 

NANA+Ichiカフェの外壁は、フィンランドで見られたボード&バテンのデザインで仕上げました。素朴な感じに見えませんか?

 

この先も、どうぞごゆっくりと、オープンカフェの時間をお過ごしください。

 

20230613

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