koagariのある家、これから始まる木工事の前に、大事な作業が終わりました。お客様との打ち合わせは数枚の図面を基に進めますが、それだけでは家は出来ず、構造材についてはこのような詳細な図面が必要となります。目がイタくなるような数字の羅列、今回はA3にして約30枚足らず。土台や2階床伏せ、屋根伏せなど、同じ高さを基準として1枚ずつ、図面が描かれます。
木造住宅は、現在ではプレカットという、工場で加工されたものを、現地で組みあげる方法が主流です。かつては大工さんが加工場で材料に墨付け、ノコやノミにより「刻み」という作業を行い、現地で建て方、棟上げという流れでした。基礎が始まるタイミングで、大工さんも仕事がスタートしていたのですが、プレカットという業界が入ったことで、大工さんの登場が昔よりも遅くなったとも言えます。
手刻みだった頃は、この建て方という節目が「人の手で加工したものが、無事立ち上がり、おめでたいと同時に、近所の方への施主のお披露目、そしてこれからも安全に皆力を合わせて頑張っていこう」という意味を込めての「上棟式」だったものが、時代とともに、このしきたりが薄まってしまったことは、少し残念でもあり、また、変化せざるを得ない部分でもあります。
それほど、このプレカットという業界が、金額だけではない魅力があったのも事実。正直手刻みの家よりも安くなっているわけではありません。それには、木造住宅の主流になりえた理由があるわけです。
理由はいくつか考えられるのですが、その中でも一番なものが「精度」です。手刻みというのは、カットする部分に墨ツボや鉛筆で線を引きます。刃物には厚みがありますので、この線を「残す」職人さんと、「残さない」職人さんにより、長さがほんの少しでも違いが出ます。それが長くつながる材料の場合、ジョイント部分が複数できますので、足された長さに影響していきます。
しかしながら、元来日本の家は許容範囲をもったものでした。単位にしても、1尺が303㎜、1寸が30.3㎜、1分が3.03㎜。メートル法と比較すると、必ず端数が伴いますが、今よりも床レベルが精度を求めない畳生活、柱が少々ずれていたとしても、襖や障子などの造作建具で、いかようにも調整出来ました。
ところが、ビー玉が転がりやすいフローリング。建て付けがそのまま表れるドア生活になると、㎜単位での精度が、木造住宅にも求められ、世のニーズとプレカット業界は、実に両方の歯車が噛み合い成長していきました。
お客様と一緒に作り上げた図面を、言葉やメモを加え、伝え、プレカット業者さんが、プレカットに必要な情報を加え、あらためて図面化します。その図面を何度かチェックしては変更を加え、最終段階でOK、発注となります。
このデータが工場に送られ、加工機に入力。家一棟につき、全ての材料の加工を行うには約6時間かかります。そして必要な材料の順番で梱包、配送となり、現地へ届けられるのが、プレカットの全てです。
昔の手刻みの頃とは状況が違いますが、毎回プレカット図面の調整が終わり発注したタイミングの気持ちは、手刻みが終わった棟梁のワクワク感と、そう違いはないのではないか、と思っています。
20190508