フィンランドの市街地から小さなフェリーに乗り15分。まるでタイムスリップしたかのような景色が広がっている島があります。その名はスオメンリンナ島。かつての歴史上の戦いで必ずポイントになってきた場所です。まるで生きている博物館。そして重要なのは、この島には今でも800人の住人がいること。観光地と生活としての島の役割が共存しています。
フェリーを降りるとこのピンクの建物が目に入ります。観光案内所もありますが、まるでこのゲートが歴史に誘う結界のようです。
薄暗い通りは古い石畳。側溝ひとつ見ても古いことがわかります。
細い通りは時折、建物の中を通ります。目的を持たず歩くことが、これほど楽しいことかと、あらためて気づかされます。
通りはアップダウンも多く、まっすぐでもないので複雑です。その分案内板はしっかりとしていて、一番上の青いプレートは、観光ルートを示しています。
島の奥に行くほど、人影もまばらになり、このような大砲の車が無造作に置いてあります。展示しているのか、戦いが終わった後の歴史遺産なのか、分かりません。しかし、絵になります。
やがて舗装もなくなり、粗い砂道になります。岩があり、木々があり、水があり、空は曇天。フィンランドの秋らしい景色です。
徘徊していると、どこが散策路でどこからがプライベートなのか分からなくなります。特に迷いやすいところには、このような、「レジデンシャル・エリア(住居エリア)」と表記されたプレートがあります。入るな!と直接書かれたプレートよりも、デザインされたサインは心地よく感じられます。
木のブランコや赤や黄の建物。普通の風景ですが、それがかえって嬉しく思える景色が続きます。
ここは、キングス・ゲート・キーという船着き場。島のすぐ横の狭い湾を大型船が通り過ぎます。こんなに狭い巾のところを大型船が通ることから、水深があることがわかります。そのことが要塞であった所以で、ヘルシンキを攻め入る際、この島を囲む海路は必ず通るルートになっていました。
島の南側には古い大砲も残されています。まるで映画の舞台にいるかのように思える島。派手な演出もなく、かといって重苦しい雰囲気もなく、生活の中に歴史がある、とても魅力的な島です。
湾からみるヘルシンキの港。島へのフェリーはトラムやバスと同じパスで乗れるため、ちょっとしたクルーズも楽しめます。
トラムを降りてフェリー乗り場へ。帰宅の時間、まもなく出航しま~す。
先ほどの大型船からスオメンリンナ島を見た様子。要塞であったことがよくわかります。内部の人工的に盛り上がった場所には弾薬庫や武器庫として使われていた部屋があります。
20201108