一関遊水地を訪れて

東北新幹線を北上し、一関駅を出ると見通しの良い長い直線区間を通ります。その区間が今回訪問した「一関遊水地」。国家事業として50年前から始まり、数年後にようやく完成する予定です。

 

上の写真では下に北上川が流れていて、川に沿うように堤防があり、その先に広大な田んぼが広がっています。この場所に洪水時に計画的に水を流し、氾濫を防ぐ、という事業構想です。

 

北上川は盛岡の先から流れ、奥羽山脈や北上山地から水を集め、宮城県より太平洋に出る長い川ですが、岩手から宮城に入る部分に、比較的細い部分があることから、ちょうどこの一関は歴史的にも洪水がたびたび起こっています。

 

その解決方法はいくつか検討された上で、街を守るために、洪水になる場所を決めておこう、と考えられたのが、この遊水地事業。第一から第三まで遊水地が造られました。

 

 

2021年3月に完成する第三遊水地の舞川水門。事業が終わると、ここは川の一部になります。この川底は将来見ることができません。

 

 

今回ご案内いただいた安田さん。この水門を発注した側の担当者により説明して頂きました。

 

 

水門そのものは巾14m、高さ16m。細かいパーツで運ばれ、この場でドリフトピンと溶接で一枚になったそうです。この門が締まるには約30分弱かかるとのこと。僅か200Vの電圧のモーターで、何個も滑車を経由し、この大きな水門を動かすそうです。

 

 

第一遊水地の大林水門。3カ所の水門のうち一番先に完成しました。建屋も造られ、只今土盛り作業行われています。

 

 

遊水地に水をためる構造はシンプルです。上の写真で中央から右側の土手の高さが他よりも1m低くなっており(堤防が切れている場所は将来つながる)、向かって右側に流れている北上川があふれる際に、この低くなった場所から、左側の遊水地に水をためます。その際、水門を閉め、川の水量が下がった段階で、水門を開け排水する、という仕組みになっています。

 

 

こちらは第二遊水地の長島水門。上から見ると水門の水圧に耐えるための肉厚さを感じます。

 

 

水門の周り、川底やのり面をえぐらないために、ワッフルのようなコンクリートブロックが敷き詰められています。

 

 

長島水門から見る堤防の景色。石で固められた堤防は、やはり先の場所と同じく他とは1m低くなっています。北上川から第二遊水地へ水が流れる場所になります。

 

この3月で3カ所(合計5門)の水門工事が終了。その後土木や建築、電気工事などが終わると、ようやく50年の大プロジェクトが完成し、供用開始となります。

 

家づくりは1年程ですが、土木は数十年の仕事であると実感しました。スケールの大きさに驚くばかりの一日でした。

 

20210312見学

 

 

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