前回の「注文住宅~オーナーは何を買うのか(前編)」では、オーナーは住宅ローンを介して金融機関との関係を手に入れる、とお話しましたが、もう一つ手に入れるものがあります。
こちらはいざ着工してからのお話。それは職人さん含め「造る人々の時間を手に入れる」ということです。
着工における最初の作業が、既存建物の解体や地盤調査となりますが、そこから数ヶ月後の完成に至るまで、数えたことはありませんが、頭数から見ると、その場所で作業する人数だけでも30~40人程はいると思います。わずか1時間だけ来る方もいれば、1ヶ月以上通い詰める大工さんなど、関わる時間はまちまちですが、職種も含め様々な人が、実際にこれからオーナーが暮らされる家に向かい、仕事をします。
実際に作業する職人さんは、〇〇邸、と記憶するより、地名が頭に入っている方が多く、終わってからしばらく経ってから、別の現場で話題になっても「ああ、△△(地名)の家ね」と結構鮮明に覚えていることに、しばし驚かせられます。
そして、これは当たり前ではりますが、各業務を請け負っている職人さんは、基本自分の仕事の完成形は目にすることができますが、本当に完成した姿は、最後に入る業種の方しか目にすることがありません。最初から最後まで日々ドラマチックに変化し、建物が造られる姿を見ることができるのは、元請けである私たちのみ。ある意味、感動的な特権をオーナーから託されています。
家づくりブログを書き始めたきっかけは「これから出会うかもしれない将来のお客さんに向けて」だけではなく、「普段なかなか見ることができないオーナーに向けて」はもちろんのこと、既に仕事が終わってしまった業種の方々が、その先の進む姿を見てもらえれば、という想いがありました。
その場所で造る(あるいは納める)仕事をする全ての方々の、一生のうちのほんのわずかな時間かもしれませんが、その時間を頂戴し、その場所で結果を置いていく。繰り返しその作業の積みあがった先に、ようやく家が完成し、オーナーにとっての新しい暮らしが始まります。
この点が、既に完成した建売住宅を購入するのと大きく違うポイントで、過ぎ去った時間は見ることができませんが、オーナーは造る方々の想いのこもった時間を、知らぬ間に手にすることが出来るのです。
20210704 仙台発イチゴイチエのいえづくり