仙台市太白区茂庭台にて、築40年平屋のリノベーション
前のオーナーさんが建てられた家を、もともとこの地でお住まいになられているWさんが求め、フルリノベーションしました。
「リノベーション」とは、リフォーム以上新築未満という、少し膨らみのある呼び方ですが、構造を残しながら大きく間取りを変え、今の暮らしに合わせて手を入れる、というイメージです。
リノベーションを行うにあたりとても重要なポイントは、構造が次の時代にも活用できること。雨漏りやシロアリなど経年劣化で傷んでいる部分が多かったり、そもそも、当時の構造がしっかり造られていなかったりすると、解体して建て直した方がメリットが多くなります。
そのためにも、オーナーさんの希望が叶うためにも、リノベーションしやすい物件に出会えるかが重要です。
幸いなことに、今回はとても材料にこだわった家でした。前オーナーさんや職人さんの気持ちが入った良い建物でした。この気持ちを受け継ぎ、恥ずかしくない仕事が求められる気がしました。2024年春から秋にかけての家づくりの記録です。
当社では施工ごとに、オーナーさまの声と、施工紹介、および完成までの過程の3つの情報を整理しております。
ぜひゆっくりと完成までの経緯をご覧ください。
当初の様子。最初の角度と同じ角度です。家の位置は変えない上で、使い勝手を良くするためには、ということで、もともと敷地内になかった駐車場を確保するために、門扉を広げ、玄関の位置も変更しました。
北側に玄関があった場所は部屋へ、写真右側の出窓がある場所に新しい玄関を設けました。
以前は出窓が多く(40年前の建物では流行っていたと思われます)、和風住宅ということで窓が大きいのが特徴でした。屋根は瓦ということで、夏の直射日光は遮られるものの、冬の寒さや結露は、対策が必要と思われました。
今回は現代の基準以上に断熱を施し、新築と同等以上の断熱性能のある家にしました。外壁は北海道のカラマツ材を、黒に近いこげ茶色に塗装し、仕上げています。和洋折衷の感じられる外観になりました。
(外壁近景)
居室には約1m角の大きさの木製窓を取り付け。庇や瓦屋根はそのまま利用。グレーのウッドデッキの相まって、和洋融合の姿です。
玄関横にあるオリジナル照明。完成した年をプレートに刻んでいます。暗くなり照明が付くと、文字が浮かび上がります。
元の玄関の様子。手前に大きな引き分け戸がありました。現在ここはシューズクロークと洋室。新しい玄関は、この写真の右側あたりになります。
玄関入り右は水回り、正面に進むとリビングダイニングへとつながります。この場所は窓が少なく薄暗いため、センサー付きの照明が天井についています。奥は自然光による明るさ、日中は明るさに引き寄せれれる効果が感じられます。
玄関横にあるベンチ。靴履きに利用するだけでなく、中は収納箱にもなっています。
廊下に取り付けた手すり。いかにも手すりです、と見せたくなく、機能性やモノは住人にとってもぶつけないための壁の保護材でもあります。
LDは北海道産のゼオライトという調質性のある塗り壁で仕上げてあるため、保護としては、より効果大です。
廊下にあるニッチ(その1) 給湯器リモコンのニッチです。下には小さな天然石を貼り、アクセントにしています。
廊下にあるニッチ(その2) こちらは何かと置き場の困る、スマホの置き場です。奥にコンセントがあり、コネクターが見えないようになっています。上段がスマホ、下段がタブレットが置けるサイズにしました。
玄関入って右側には水回りがあります。この部分のレイアウトは大きくは変更していませんが、昔の建物らしく天井高が高かったことを活用し、ロフトを設けています。
施工前の同じ位置の姿です。
階段下の三角部は洗濯機置き場、引き戸を介して乾燥&脱衣室へとつながります。右側にはサニタリーがあります。
造作カウンターの上にあるガス乾燥機。洗濯機の上でないことで、使い勝手を優先しカウンター高を決めました。
階段の断面はリズミカルで実に綺麗です。オープン階段の魅力です。
造作の洗面カウンター。鏡の上の天井が低くなっている部分に、ガス乾燥機のダクトが入っています。天井が低いことで、鏡の奥にある照明のあかりが反射し、当初のイメージよりも明るくなりました。
階段を上がったところのロフトです。収納だけではもったいない「こもり部屋」になりました。
ロフトと階段、玄関や廊下の関係。間仕切りはなくオープン。高さだけで必要なスペースを確保しています。
3つの窓が並ぶ部屋は、子供部屋になっています。同じサイズの扉が3本並んでいます。扉はアルダー材で出来ていて、少しワイルドな雰囲気がありますが、無垢の扉らしい表情です。
施工前の同じ角度の様子、もともとは居間だった場所です。ここに廊下と各子供部屋を設けました。
子供部屋には造作カウンターは本棚があります。手元照明も直接目に入らないように、さりげなく取り付けています。
子供部屋の前にあるうんてい。しっかり下地に取り付けていますので、大人がぶら下がっても大丈夫。
LDKの様子。もともと2つの和室と廊下があった場所です。キッチンは大幅に位置を変えました。天板と扉が同じ素材で出来たグラフテクトキッチン。濃い色がアクセントカラーになっています。
施工前の同じ角度からの様子。
LDKを奥側から見た様子。もともと立派な床の間があった場所には小上がりスペースにしました。この床柱と各方面から力がかかっている、他よりも少し太い柱は、あえて化粧柱として残しました。
施工前の様子。床柱は新たな暮らしへのバトンの役目です。
この家は、ほぼすべての柱や土台が、今ではとても貴重なヒバ材で出来ています。この化粧柱も15㎝あるヒバの角材、そして当時の大工さんが丁寧に加工した跡があり、それを解体時、取り置きした化粧造作材で埋め木しました。このパッチワークも家歴の証拠です。
小あがりの床は畳敷きで、座ったり寝転がったりできます。両脇の壁には本棚があります。手前を引き出すと、キャスターのついた大きな引き出しとなっていて、普段使いのちょっとしたものがしまえるようになっています。
ダイニングの照明はオーナーさんセレクト。3Dプリンターで作られた樹脂で出来たシェード。月になっていて表面もリアル感満載で凸凹しています。
中庭側から見た様子。3枚の正方形の窓は子供部屋が並んでいます。リビングの窓は大きく、加えて庇があることから夏の日差しを遮ります。またこの庇にはもともと雨どいが付いていないため、屋根下地としての垂木もあらわし、雨が降ると風情な様子も楽しめます。
前オーナーさんの心意気をもとに、職人さんがしっかりと造ってくれたおかげで、またあらたな家歴を歩むことができました。40年前の職人さんと、言葉のない会話が出来たような今回のリノベーション。取り組む側も大いに楽しませていただきました。
2021024記
当社では施工ごとに、オーナーさまの声と、施工紹介、および完成までの過程の3つの情報を整理しております。
ぜひゆっくりと完成までの経緯をご覧ください。