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仙台発イチゴイチエのいえづくり

タウシュベツ川橋梁の表情

ちょうど一年前の写真。北海道、糠平というところにある、古いコンクリート橋がいよいよ崩壊寸前というニュースを目にし、思い立って、かねてから見たいと思っていた、その橋、を訪れました。

 

帯広から車で約一時間、道中はこのような音楽ジャケットのような風景が広がっています。

 

糠平湖の畔に朽ち果てたコンクリート橋が見えます。綺麗なアーチが見られるタウシュベツ川橋梁。橋の奥からタウシュベツ川が糠平湖へ流れています。

 

ここはその橋が眺められる展望広場。橋を間近で見るためには、クマに遭遇するかもしれないが自力でたどり着くか、ガイドツアーに参加するか、どちらかの選択ですが、私は迷いなく後者を選びました。

 

古代ギリシャ・ローマ帝国のような風景。実はたった80年しか歴史のないコンクリート橋です。ここは旧国鉄士幌線のあった橋。帯広へ木材を運ぶための鉄道が敷かれました。セメントさえ調達できれば、水や砂、石(骨材)、そして足場や型枠となる木材は、周辺に豊富にあります。鉄橋ではなくコンクリートが採用されたのもうなづけます。

 

橋の断面。工期を短縮するためにも、コンクリートは橋桁の表面に使い、型枠を解体したのち、玉石を詰める方法だったことが分かります。

 

しかしコンクリートの耐久年数からしても、時間以上に朽ちている感が否めません。

 

こちらはほぼ同じ時期、同じ工法につくられた第三音更川橋梁。タウシュベツ川橋梁とまったく表情が違います。

 

実はタウシュベツ川橋梁は、糠平湖という人工湖の中に位置します。糠平湖は電力のためにつくられた湖。北海道は冬に電力が必要となるため、夏から冬にかけて貯水します。そのため、このタウシュベツ川橋梁も湖水で見えなくなる時期があります。そして年が明け、水位が下がることで徐々に橋が現れ、夏まで全容が見られることから、幻の橋、とも呼ばれています。

 

しかし湖水のアップダウンだけでは橋はこれほど傷みません。

この風化した表情をつくっているのは、湖面に広がる「氷」です。水力発電の水は、湖底から取水するため、冬の時期、湖面に広がる氷は、融けることなく、まるで刃物のように、橋脚の表面を削ります。

この現象が自然のものではあるが、実は人工物(ダム)の副産物、というのが興味深いポイントなのです。

 

当日ガイド頂いた、NPO法人ひがし大雪自然ガイドセンターの上村さん。氷は上から徐々に下がりながら削るため、その影響を受けにくい、橋脚の裏が綺麗なのが分かりますでしょうか。

 

もう一つ不思議な光景が湖底に広がっています。ダム湖が出来るまでここは森林の中でした。普通は森のまま水をはり、ダムに流れ着いた木材を回収するのですが、ここは木が貴重な産業だった場所。水に埋もれる前に綺麗に伐採されました。今でも当時の刃物の跡がのこる切株は、まるで少しずつ移動しているような、湖底に生きるモンスターに見えます。

この一見、地球上とは思えない光景。携帯電話のCMにも使われました。

 

そう、「〇〇を超えていけ」 というシーンです。

 

2018年6月16日

 

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